美健JUMP! Dr.健康相談:便秘


意外と知らない便秘のいろいろ
~効果的な対策と予防~

多くの人が悩まされている便秘。身近な問題でありながら意外と知られていないその原因や症状、効果的な対処法・予防法について紹介します。

1.便秘とは


2016年度国民生活基礎調査によると、国民の2~5%が便秘だと回答しており、男性(2.5%)よりも女性(4.6%)に多い傾向を示しています。

多くの人が悩まされている便秘ですが、定義については意外と知られていません。「毎日排便がないこと」を便秘と捉えられがちですが、実際は“正常な排便回数は、概ね1日3回~1週間に3回の範囲内とされており、排便回数でいうと「週に3回未満」”が便秘とされています。

2.排便の仕組み


便秘について理解する前に、正常な排便の仕組みについて知りましょう。

① 口から食べた物が噛むことによって細かく砕かれ、唾液に含まれる消化酵素により分解されます。細かく分解された食物は、食道を通り、胃に運ばれます。

② 胃に運ばれた食物は胃酸と蠕動運動により消化されて粥状になり、小腸に運ばれます。

③ 小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの部分から成り立っています。十二指腸では、すい臓から分泌されるすい液と胆のうから分泌される胆汁によってさらに消化されます。また、便の色は胆汁によってつけられます。

④ 小腸の内壁には、絨毛(じゅうもう)とよばれる約1ミリの突起状のひだがあります。このひだで栄養素を吸収します。小腸では、炭水化物、タンパク質、脂質が消化酵素により分解され、吸収されます。

⑤ 小腸から大腸に運ばれる時、食物は液状になりますが、大腸において水分等が吸収され、直腸に到達する時は、固形状になります。

⑥ 直腸に便がくると、その刺激により内肛門括約筋が緩みます。また、脳に便が届いたことが伝わり、便意を催します。排便する準備ができた時、外肛門括約筋を意識的に緩め、便を出すことになります。

3.便秘のタイプとその原因


便秘は大きく機能性便秘器質性便秘に分けられます。

機能性便秘

機能性便秘とは、腸の動きが悪くなることが原因で起こります。排便回数の減少排便困難の他に、腹痛腹部膨満感食欲減退といった一般的に便秘と言われて想像されるような症状が現れます。

機能性便秘はその原因により次の3つに分類されます。

〔1〕急性便秘
急性便秘とは、一時的に便秘になってしまう状態です。必ずしも服薬は必要とせず、周りの環境を整えることで症状が治まるのが特徴です。原因は以下のようなものがあげられます。

① 急激なダイエット等による食事量の低下
② 食生活の偏りによる食物繊維の不足
③ ストレスや環境の変化による精神過敏状態
④ 運動不足による腸の動きの低下
⑤ 水分量の減少による便の硬化

〔2〕慢性便秘
便秘が3ヶ月以上続いた状態を慢性便秘と言います。慢性便秘は次の3つに分類されます。

① 弛緩性便秘
加齢により腸を構成する平滑筋の筋力が弱まったり、食生活の偏りやストレス、水分量の減少が長期化することで慢性的に蠕動運動が弱まり、便が輸送されにくくなった状態です。

② 直腸性便秘
肛門の直前の直腸部分で便が止まってしまっている状態の便秘です。便意があっても我慢したり、浣腸を乱用したりといった習慣により、便意を感じにくくなった状態です。

③ けいれん(痙攣)性便秘
ストレスや過敏性大腸炎が原因となって起こる便秘です。便秘と下痢を繰り返し、硬くコロコロした便が多くなり、下腹部の痛みを伴うことがあるのが特徴です。

〔3〕医原性便秘
医原性便秘とは、薬の副作用によるものを指します。 がんの痛みを抑えるモルヒネや、抗うつ薬などの副作用によって便秘の症状が現れることがあります。

器質性便秘

腸閉塞腹膜炎大腸がんといった消化管の病気が原因となっておこる便秘を器質性便秘と呼びます。
便秘以外の症状として、発熱激しい嘔吐、強い腹血便などを伴うことがあります。こういった症状が出た場合には、病院を受診した方が良いでしょう。

4.生活習慣改善による便秘の対処法・予防法1)

症状が軽い機能性便秘の治療・予防において重要なのは、生活習慣の改善です。

なかでも重要なのが、「水分と食物繊維、乳酸菌の摂取」「排便姿勢」「運動」「ストレスの軽減」です。

〔1〕水分と食物繊維、乳酸菌の摂取

特に高齢者では、水分と食物繊維が不足しがちです。一日1.2ℓほどの水分を飲料として摂取することが推奨されています。また、一日20g以上の食物繊維の摂取が勧められています。食物繊維は野菜類、穀類、豆類、きのこ類、いも及びでん粉類に多く含まれている為、積極的に摂るようにしましょう。
その他に、乳酸菌の摂取も効果があると考えられています。

1ヶ月間乳酸菌飲料を飲み、便秘の改善を調べた研究では、1週目から排便回数の改善がみられ、「排便後すっきりするようになった」、「排便が夜から朝になった」、「下腹がはるような感じがなくなった」といった効果がみられました2)

〔2〕排便姿勢

排便時の姿勢も便秘の治療には有効で、強く前傾姿勢をとるだけで便秘が改善することがあります。

〔3〕運動

椅子に座ったり、寝た状態で体をひねって腸のストレッチをしたり、ウォーキングなどで全身の血流を増やすことで腸の蠕動運動が活性化し、便秘の改善に効果的です。また運動後に、おへそを中心に大きく「の」の字を書くように時計回りにマッサージをするのも、腸の働きを助けるとされています。

〔4〕ストレスの軽減

便秘とストレスは一見関連性がないようですが、ストレスをきっかけに便秘を生じることは少なくありません。腸管の蠕動運動は、交感神経と副交感神経のバランスで保たれているため、ストレスで緊張状態が強くなり自律神経が不安定になると排便習慣のリズムが乱れてしまい、便秘につながってしまうのです。

誰かに話を聞いてもらう、趣味を楽しむなど、自分に合った方法でストレスを発散し、リラックスできる時間を増やしていきましょう。便意があったら我慢しないこと、便秘を気にしすぎないことも大切です。

5.薬物療法


生活習慣を改善しても便秘が良くならない方もいらっしゃいます。便が出ないことで、吐き気や腹痛、痔疾といった症状で悩まされたり、食事や外出、旅行なども楽しめなくなることもあります。そのような場合は、かかりつけ医に相談して、便を柔らかくする薬や、大腸を刺激して蠕動を促進する薬を処方してもらうことで、これまでの苦しさが嘘のように改善することもあります。大切なことは、便秘で悩んでいる状態を放置しないことです。

6.まとめ


今回は排便の仕組みから便秘の種類、その対処法・予防法などについて紹介しました。生活習慣の改善で、スッキリとした毎日を過ごしていきましょう。

【参考文献】

1) 中島 淳. 慢性便秘の診断と治療. 平成27年度日本内科学会生涯教育講演会, 2015.
2) 片山 直美, 他.乳酸菌摂取による便秘改善に対する評価.名古屋女子大学寄稿, 2006.

監修:新井勝大(あらいかつひろ)先生

現職:
国立成育医療研究センター 器官病態系内科部 消化器科 診療部長

小児炎症性腸疾患センター センター長

1994年 宮崎医科大学(現:宮崎大学医学部)卒業
1995年 カリフォルニア大学アーバイン校産婦人科胎児生理学リサーチフェロー
1996年 在沖縄アメリカ海軍病院シニアインターン
1997年 亀田総合病院レジデント
1998年 Beth Israel Medical Center(米国)小児科レジデント
2001年 Schneider Children’s Hospital(米国)小児消化器科フェロー
2004年 東部地域病院小児科
2005年 順天堂大学附属練馬病院小児科助手
2006年 順天堂大学附属練馬病院小児科准教授
2006年 国立成育医療研究センター消化器科医長
2018年 国立成育医療研究センター消化器科診療部長
2019年 国立成育医療研究センター小児炎症性腸疾患センター長(併任)