美健JUMP! 気になる栄養素辞典


新たな健康意識で注目されている免疫乳酸菌1)

新企画「気になる栄養素辞典」が2021年1月よりスタート!

このコーナーでは、毎回気になる栄養素をクローズアップし、予防医学の権威である矢澤一良先生に監修いただきます。


まず第一回目は「免疫乳酸菌」。皆さんは免疫乳酸菌という言葉をご存知ですか?“免疫”と“乳酸菌”について聞いたことがあっても、「免疫乳酸菌」という言葉については知らない方が多いのではないでしょうか。今回は、効率的に免疫力を高め、様々な病気の予防に効果があることから新たな健康意識で注目されている「免疫乳酸菌」についてご紹介します。

1.「生きた乳酸菌」は健康効果が高い?!


「生きた乳酸菌を腸にとどける」といった宣伝文句を耳にしたことはありませんか?
ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、“生きたまま”腸に送り届けられることで、腸内環境が改善すると考えられてきました。しかし最近の研究では、乳酸菌の健康効果は乳酸菌の生死に関係なく得られることがわかってきました。そもそも、生きた乳酸菌を摂取しても、その多くは消化管を通過する過程で殺菌されてしまいます。また、腸まで到達できた乳酸菌も、腸内の常在菌によってすぐに排除されてしまいます。つまり、食品で摂った乳酸菌が、生きたまま腸で増えて健康効果を発揮するのは難しいのです。

それでは、健康効果に影響するものは何なのでしょうか。それはずばり乳酸菌の“菌数”です。乳酸菌の働きは多岐にわたりますが、目的に応じた適切な菌数を摂ることが大切になります。

例えば、腸内の蠕動運動を活発にする場合には生菌が望ましく、約1000億の乳酸菌が必要と言われています。また、免疫力を高める為には死菌が望ましく、約1兆個の乳酸菌が必要と考えられています。

つまり、「生きた乳酸菌(生菌)」も「死んだ乳酸菌(死菌)」もそれぞれに健康効果を高めることはできますが、免疫力を高めることを目的とする場合には、菌数をより沢山摂ることができる「死菌」の摂取が望ましいとされています。このことから、「死菌」は別名「免疫乳酸菌」とも言われるようになりました。

実際に食事で摂った乳酸菌は生死に関わらず、菌体そのものが腸管を刺激し、全身の免疫力向上をもたらしていると考えられています。腸管は、食事のたびに大量の異物が入ってくる危険ゾーンなので、ここには体の内部とは別の特別な防御網が存在します。それが、腸管免疫と呼ばれるシステムなのです。

因みに、腸管免疫に働く白血球は、常に活性化しているのは5%程度で、残りの95%は眠った状態にあると言われています。1)乳酸菌を日常的に摂ることで、そのような“眠れる白血球”を絶えず刺激していれば、病原菌にも負けない体づくりをすることができるでしょう。

2.免疫乳酸菌の種類・働き


一口に免疫乳酸菌といっても、特定の菌を指すのではなく、ラクティス菌やカゼイ菌、ブルガリア菌など様々な種類があります。
例えば、代表的な免疫乳酸菌に「フェカリス乳酸菌」があります。フェカリス菌とは、私たちの腸の中にも住んでいる腸球菌の一種で、腸管免疫を高めることで知られています。

フェカリス菌の免疫の働きを調べた研究2)では、フェカリス菌の特定の菌株が、ヒトの腸管細胞における炎症反応を抑える働きをすることが明らかになり、フェカリス菌が免疫反応の調整の役割の一部を担っていると報告されています。
そしてこのフェカリス菌も、生菌として摂取するよりも、死菌として摂取する方が免疫力を向上する効果が上昇することが分かってきました。

他にも、免疫乳酸菌は生活習慣病や感染症、アレルギー、精神疾患の予防にも効果が期待でき、カラダづくりの万能薬と考えられています。3)

3.免疫乳酸菌(死んだ乳酸菌)の目標摂取量


それでは、目標の乳酸菌量を摂取するには、食品としてどの程度摂取すれば良いのでしょうか。

前にも述べたように、免疫機能を向上させるには毎日少なくとも1兆個の乳酸菌を摂取する必要があるとされ、それはヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれる「生きた乳酸菌」で計算すると、約10ℓに該当します。10ℓのヨーグルトや乳酸菌飲料を毎日摂取するのは現実的ではありませんが、免疫乳酸菌では1gあたり最大で1兆から数兆個の乳酸菌を摂ることができるものもあります。このことからも、乳酸菌による健康効果を得るためには、適切に加熱殺菌処理された免疫乳酸菌を、食品に加えてサプリメントなどで摂取することが効率的であると言えるでしょう。

また、乳酸菌の効果を期待するのであれば、毎日継続的に摂取することが大切です。

4.免疫乳酸菌の摂りすぎは危険?


多くの健康効果を有する免疫乳酸菌ですが、摂りすぎることで何か体に害はあるのでしょうか?

免疫乳酸菌はヒトの腸にもともと存在する「善玉菌」であり、体に害はありません。また大量に摂取しても腸にとどまることはなく2~3日で排出されるため、摂りすぎを心配する必要はないのでしょう。

5.免疫乳酸菌を摂取するには


これまでにもお話したように、免疫乳酸菌を摂取するには、サプリメントなどの栄養補助食品を利用することが最も効率的です。

また、最近では「乳製品乳酸菌飲料」と表記されたヨーグルトや乳酸菌飲料も増えており、チョコレートや クッキーなどにも含まれていることがあります。商品表示ラベルを見て、適切な菌数の乳酸菌が含まれている商品を探してみるのも良いかもしれません。

【参考文献】

1) 矢澤 一良. 新健康物質「免疫乳酸菌」で防ぐガン、生活習慣病―健康が気になりはじめたあなたへ.現代書林,2001.
2) Wang S. et al, Infant intestinal Enterococcus faecalis down-regulates inflammatory responses in human intestinal cell lines.
World Journal of Gastroenterology 14, 2008.
3) 弘田 辰彦.殺菌された乳酸菌のはたらき.生物工学 第97巻,2019.
光岡 知足.プロバイオティクスの歴史と進化.日本乳酸菌学会誌Vol.22, 2011.

監修:矢澤 一良(やざわかずなが)先生

所属:早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構
規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 (部門長)

略歴:

1972年 京都大学・工学部・工業化学科 卒業

1973年 (株)ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務

1986年  (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員)   

1989年  東京大学より農学博士号を授与

2000年 湘南予防医科学研究所 設立(主宰)

2002年 東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科
            ヘルスフード科学(中島董一郎記念)寄附講座 (客員教授)

2012年 東京海洋大学 特定事業 「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト (特任教授)

2014年 早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門(研究院教授)

2019年 現所属 

主研究テーマ:
1.予防医学的食品・医薬品素材に関する研究
2.海洋資源の有効利用に関する研究
3.天然物の生理活性成分の探索と薬理学的研究
4.微生物の新しい機能の探索に関する研究

受賞:
・1994年 日本脂質栄養学会より学会賞「ランズ産業技術賞」を授与
・2006年 マリンバイオテクノロジー学会より学会賞「岡見賞」を授与

学術活動・社会活動:
熊本保健科学大学(客員教授)、中国瀋陽薬科大学(客員教授)、日本脂質栄養学会(評議員・理事)、日本機能性食品医用学会(理事)、マリンバイオテクノロジー学会(理事)、日本臨床栄養協会(理事)、健康・長寿研究談話会〔旧ホスファチジルセリン研究会〕(会長)、アスタキサンチン研究会(世話人)、日本アントシアニン研究会(会長)、一般社団法人ウェルネスフード推進協会(代表理事・会長)、NPO法人健康食品フォーラム(理事)、日本農芸化学会(代議員)、日本黒酢研究会(会長)、クリルオイル研究会(会長)、ヒアルロン酸機能性研究会(会長)、ノビレチン研究会(会長)、パラミロン研究会(会長)、昆布の栄養機能研究会(代表理事)、など