栄養素辞典β-グルカン

今、注目されているβ-グルカン
きのこや大麦に含まれる栄養素、β(ベータ)-グルカン。免疫力を向上させる働きなど、多くの可能性を秘めている成分として研究がすすめられています。今回は、β-グルカンの持つ働きや、様々な健康効果についてご紹介します。

1.β-グルカンとは

β-グルカンは、穀物、キノコ類などの細胞壁を形成する食物繊維の一種です。

食物繊維は大きく分けると、水に溶け粘性をもつ「水溶性食物繊維」と、水に溶けずに水分を吸収することで膨張する「不溶性食物繊維」がありますが、β-グルカンは何由来かによって水溶性か不溶性かが分かれ、様々なタイプを持ちます。

たとえば、目に見えないほどの大きさの「乳酸菌」や「酵母」にも細胞壁が存在し、その細胞壁はβ-グルカンで構成されているのです。腸管免疫や腸内環境を整える乳酸菌の作用は、β-グルカンが担っているとも言えるのです。

2.β-グルカンの働き

穀物由来や海藻由来のβ-グルカンは「水溶性食物繊維」であるため、余分なコレステロールを吸着し排泄したり、腸内をゆっくり移動することで、食後血糖値の急激な上昇を抑制する働きがあります。また腸内で発酵し分解されると、善玉菌が増え、腸内環境が良くなり整腸効果が期待できます。

一方でキノコ由来や酵母由来のβ-グルカンは「不溶性食物繊維」であるため、胃や腸の中で水分を吸収し、便の体積を増やし、大腸を刺激することで腸の蠕動運動が活発になり、排便を促す働きがあります。

さらに、β-グルカンは大きな特徴の一つとして、免疫力を高める働きがあるといわれています。β-グルカンは、腸内に点在する免疫器官パイエル板細胞にとりこまれ、その刺激によりマクロファージや好中球の働きが活性化するといわれている為、体内に侵入してきた細胞やウィルスを捕食し、除去する効果が期待できます。

また近年、腸管免疫が脳の機能に影響を及ぼす“脳腸相関”という考え方が注目されています。ある研究では腸内環境を整えることにより、認知症を予防する効果があることが明らかになりました1)。β-グルカンを15週間摂取したマウスは、免疫機能の向上とともに、記憶を司る海馬の老化が抑制されました。また、β-グルカンを摂取しなかったマウスと比べて、認知機能が高かったと報告されています。つまりβ-グルカンを摂取し、腸管免疫を良好に保つことが認知症の予防にもつながる可能性があるのです。

その他、β-グルカンにはいくつか種類がありますが、β-(1,3)-D-グルカンは「レンチナン」と名付けられ、抗がん作用を中心に多くの基礎研究でその効果が報告されています。また、日本での臨床治験においては、胃がんに対して化学療法との併用により生存期間の延長効果が認められ、抗がん剤として承認されました2)。

このように、β-グルカンはいろいろな働きが期待でき、体の健康を維持するために大切な栄養素であるといえます。

3.β-グルカンの目標摂取量と摂取方法

目標となるβ-グルカンの摂取量の目安は、1日3gです。アメリカでは、1日3g以上のβ-グルカンを摂取することにより、血中総コレステロール量が有意に低下したという研究結果もあります3)。また、日本においても、1日約3gのβ-グルカンを摂取することにより、内臓脂肪を減らす効果があると考えられています4)。

それでは、効率よく1日3gのβ-グルカンを摂取するにはどうすれば良いでしょうか?

4.摂りすぎるとどうなる?

β-グルカン等の食物繊維には、上限値は設定されていません。もし、たくさん摂取してしまった場合でも、吸収しきれない分量は体外へ排出されます。ただし、一度に大量に摂取すると、便がゆるくなることがあります。

5.まとめ

今回は食物繊維のβ-グルカンについてご紹介しました。

食物繊維の中でもあまり聞き慣れないβ-グルカンですが、積極的に摂取することにより、健康的な毎日を過ごすことができると期待されています。

参考:
1)Shi H, et al. β-glucan attenuates cognitive impairment via the gut-brain axis in diet-induced obese mice. Microbiome. 8, 2020.
2)須賀 哲也. 免疫賦活成分β-グルカン(lentinan)含有機能性食品の研究開発.日本食品保蔵科学会誌.30(6),2004.
3)Ripsin CM, et al. Oat products and lipid lowering. A meta-analysis. JAMA. 267,1992.
4)青江 誠一郎.大麦β-グルカンの機能性について.日本食生活学会誌.第26巻,2015.

この記事の監修

矢澤一良(やざわかずなが)

1948年生まれ
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用生命科学専攻ヘルスフード科学(中島 董一郎記念)寄附講座教授農学博士(東京大学)