今さら聞けない「五十肩」の基礎知識

関節・筋肉・骨 監修  内藤 晴義先生

「肩が痛くて腕が上がらない。年齢も50歳を過ぎたし、これがよく聞く五十肩かなぁ…」といった経験はありませんか?実は「五十肩」という病名はなく、その原因や予防法、治療法はあまり知られていません。
今回は五十肩について知ることで、肩のお悩み・不安を解消しましょう!

「五十肩」チェックリスト


□ 肩や首の辺りに不快感や違和感がある
□ 肩を動かすと腕まで痛みが生じる
□ 痛い方の手が後ろに手が回らない
□ 腕を上げると、肩関節周囲に痛みを感じ、痛みのために腕を上にあげにくい
□ 両腕を左右に広げにくい
□ 肩の痛みがだんだん増してきている
□ 年齢が50歳以上である
□ これまでに肩のケガをしたことがある
※3個以上、チェックが入った人は注意が必要です。


五十肩って何ですか?

肩関節に炎症が起きて、痛みがでたり動かしづらくなったりする状態を言います。

正式な病名を「肩関節周囲炎」と言い、中年以降、特に50歳代に多く発症するため「五十肩」と呼ばれるようになりました。実は「四十肩」も全く同じ病気で、発症年齢により呼び方が異なります。
五十肩になると肩が痛み、髪を結んだり服を着替えたりすることが不自由になります。また、夜に眠れなくなるほど肩が痛むこともあります。


五十肩の原因は何ですか?

加齢により、肩関節の周りの組織に炎症が起こりやすくなるためです。


関節を構成する骨、軟骨、靭帯や腱などが老化して変形し石灰が沈着したり、擦れ合って筋肉の膜(筋膜)同士が癒着するなどして炎症が起きることが主な原因と考えられています。また、肩関節の動きをよくするための袋・肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)や関節を包む袋・関節包が癒着すると、さらに関節の滑らかな動きが悪化し炎症が引き起こされます。その結果、激痛が生じるのです。


どんな人がなりやすいですか?

中年以降でデスクワークをしている人がなりやすいです。

五十肩になりやすい年齢は40~70歳代であり、全体の8割以上を占めます。また、これまでに重い荷物を運ぶなど、肩に負担がかかる仕事をしていた方よりも、デスクワークであまり肩を動かさず、運動不足の方がなりやすいとされています。


肩こりとはどう違うんですか?

肩こりの原因は筋肉が硬くなることで、痛みの感じ方も異なります。

「肩こり」は、姿勢の悪さや目の疲れ、精神的なストレスなどによって肩や首の筋肉が常に緊張した状態で硬くなり、血流が悪くなってしまう状態のことです。これにより老廃物が溜まりやすくなり、肩や首に重だるい痛みが生じます。


五十肩と肩こりの原因や症状は異なりますが、肩こりが原因で五十肩に発展してしまう可能性もあるので、肩や首の筋肉をほぐしたり、運動不足にならないように肩をしっかりと動かしたりすることが大切です。


五十肩と肩こりの違い



























  五十肩(肩関節周囲炎) 肩こり
原因 肩関節の周りの組織の炎症 筋肉が硬くなり、血流が悪くなる
痛み 鋭い痛み
肩を動かした時の痛み
夜間の激しい痛み
重だるい痛み
肩を動かした時の痛みや夜間の痛みは軽度
肩の動き 腕を上げたり、手を後ろに回したりする動作がしづらくなる 動きが制限されることはほとんどない



五十肩の対処法を教えてください。

簡単な運動やストレッチが効果的です。痛みが強い場合は安静にし、医療機関を受診してください。

痛みが強い時は無理に動かさず、安静にして医療機関を受診してください。無理に動かすことで炎症が悪化してしまうことがあります。
症状が軽度(ほとんど痛みはなく、わずかに動かしづらい程度)の場合は、簡単な運動やストレッチで症状が悪化するのを防ぐことができます。


五十肩体操

1.振り子運動
足を肩幅に開き、腕を下ろしておじぎをします。身体を前後に揺らし、腕を振り子のように30秒ほど動かします。



 


2. 雑巾がけ運動
机の前に座り、雑巾をかけるように両手を伸ばし、ゆっくりと身体を倒します。痛みが出る前に止め、再びゆっくりと身体を戻します。



 


※それぞれ10回ずつ行ってください。痛みのない範囲で動かし、少しでも肩の痛みが強くなったら中止してください。


五十肩になる前に、効果的な予防方法はありますか?

体操やマッサージなど、日頃からケアすることが大切です。 

予防体操

デスクワークなどで同じ姿勢が長時間続く方におすすめです。無理のない範囲で身体を動かしてみましょう。



1. 肩をすくめる運動
肩をゆっくりあげてゆっくりおろします。


 


 



2. 腕を開く運動
両肘をお腹の横につけ、ゆっくり外に開き、次にゆっくりと閉じます。背中の中心に肩甲骨を寄せるように意識します。


 


※それぞれ10回ずつ行ってください。痛みのない範囲で動かし、少しでも肩に痛みや違和感があったら、中止してください。


セルフマッサージ

首の付け根と肩の端の真ん中あたり(左右1カ所ずつ)に、肩こりに効果的な「肩井(けんせい)」というツボがあります。触るとやや硬い感触があり、軽く押した時に“痛気持ちいい感覚”があるところが正しいツボの位置です。1日数回、1回に3~5回程度軽く刺激しましょう。リラクゼーションやマッサージオイル(エミューオイル・アルガンオイル・ホホバオイルなど)の使用もおすすめです。



肩や首を温める

少し熱めのシャワーや蒸しタオルを使い5分程度、肩や首の筋肉を温め、血流を良くすることも肩こりや五十肩の予防に効果的です。
加齢によって生じやすくなる五十肩ですが、このように日々の運動や生活習慣の改善により予防することができます。肩の力を抜き、痛みのない生活を目指しましょう!


今回相談にのってくれた先生

 内藤 晴義先生

1980年、東海大学理学部化学科卒。森下製薬に勤務ののち、日本柔道整復専門学校卒。
1986年、内藤接骨院を開業。

(公社)日本柔道整復師会会員、(公社)神奈川県柔道整復師会会員、日本柔道整復接骨医学会会員、(公社)日本医学協会理事、神奈川県柔道整復師協同組合理事長。元 日本柔道整復接骨医学会編集委員長。元 (社)日本柔道整復師会広報部員・IT委員会 委員